日本応用数理学会 2018年研究部会連合発表会

日本応用数理学会 2018年研究部会連合発表会

 


プログラム

 

セッション1 3月16日 (金) 11:10 – 12:30

  • 講演1(11:10 – 11:30)
    非有界線形作用素の作用素関数に対するShift-invert Rational Krylov法
    ○橋本 悠香(慶應義塾大学理工学研究科/理研AIP), 野寺 隆(慶應義塾大学理工学部)

    概要:時間発展を含む偏微分方程式の数値解を求める手法には,行列関数とベクトルの積を用いる方法がある.本発表では,行列関数とベクトルの積を効率的に計算するKrylov部分空間法を提案する.対象となる行列は非有界な作用素を離散近似したものとなるため,値域が広範囲に分布するなど,非有界に近い振る舞いをする場合が多い.そこで,離散化を行う以前の非有界な線形作用素に関して考察することで,提案法の有効性を示す.
  • 講演2(11:30 – 11:50)
    グラスマン多様体上のニュートン方程式の水平空間での表現とその求解について
    ○佐藤 寛之(京都大学),相原 研輔(東京都市大学)

    概要:本発表では,グラスマン多様体をシュティーフェル多様体と直交群から構成される商多様体として扱い,その上の一般の目的関数の最適化問題,およびその解法のひとつであるニュートン法について議論する.特に,ニュートン法の各反復における探索方向が満たすべきニュートン方程式を水平空間上の線形方程式として導出し,さらにクリロフ部分空間法に基づいて,目的関数のヘシアンの表現行列を用いない反復解法を提案する.
  • 講演3(11:50 – 12:10)
    有限要素外積解析に対するRRGMRES法
    ○佐藤 智久(神戸大学), 谷口 隆晴(神戸大学/JSTさきがけ)

    概要:抽象的Poisson問題に対する有限要素法である有限要素外積解析では,連立一次方程式の定式化のために,非正則な係数行列を作成した後,その係数行列の核に対応する,離散調和形式と呼ばれる関数の空間を求める必要がある.本発表ではrange restricted GMRES法(RRGMRES法)を用いることで,係数行列の核を求めることなく有限要素外積解析の理論解析が適用可能な解が得られることを示す.
  • 講演4(12:10 – 12:30)
    複数右辺ベクトルをもつ連立一次方程式に対するBlock BiCGGR法の近似解精度改善
    ○多田野 寛人(筑波大学)

    概要:複数右辺ベクトルをもつ連立一次方程式の反復法の一つであるBlock BiCGGR法は,漸化式で生成された残差と真の残差間のギャップが小さくなるように設計された方法である.しかしながら,同法ではこのギャップ発生の原因となる誤差項が存在しており,その影響を完全には打ち消せていない.本発表では,この誤差項の発生を抑える改良法を提案し,更なる近似解精度の改善を図る.

セッション2 3月16日 (金) 13:30 – 14:50

  • 講演5(13:30 – 13:50)
    単精度浮動小数点数環境にも有効な Augmented Implicitly Restarted Lanczos Bidiagonalization 法の改良
    石田 遊也 (ヤフー株式会社),高田 雅美(奈良女子大学研究院生活環境科学系),○木村 欣司(京都大学大学院情報学研究科),中村 佳正(京都大学大学院情報学研究科)

    概要:昨年度の研究部会連合発表会で発表したAIRLB法の改良は, 倍精度浮動小数点数環境では効果的であったが、単精度浮動小数点数環境では、そうではないことが判明した。そこで、単精度浮動小数点数環境にも有効な改良を改めて提案する。
  • 講演6(13:50 – 14:10)
    一般化固有値問題に基づく同時対角化の新しい応用:音源分離の高速化
    ○伊藤 信貴(NTT)、荒木 章子(NTT)、中谷 智広(NTT)

    概要:従来の音源分離技術では、高精度な音源分離が可能であるが、計算量が膨大で処理に長時間を要するため、応用範囲が大きく限定されていた。これに対し本発表では、一般化固有値問題に基づく同時対角化を応用することで、音源分離の精度を低下させることなく、上記の従来技術を大幅に高速化できることを示す。実験では、この高速化手法により、従来比250倍超の高速化が実現し、8秒の混合音に対する音源分離を、わずか2.7秒の処理時間で行うことができた。
  • 講演7(14:10 – 14:30)
    対称性を保存するblock SS–Hankel法について
    ○今倉 暁(筑波大学)、二村 保徳(筑波大学)、櫻井 鉄也(筑波大学、JST/CREST)

    概要:指定領域内の固有値および対応する固有ベクトルを求める解法として,block SS–Hankel法が知られている.Block SS–Hankel法において,対象の固有値問題はblock Hankel行列を係数に持つ小規模な一般化固有値問題に帰着されるが,問題が対称一般化固有値問題である場合,帰着される固有値問題はその対称性が一般には保存されず,計算時間の増大および固有対の精度劣化を引き起こす.本講演では,対称性を保存するblock SS–Hankel法を提案し,数値実験からその有効性を検証する.
  • 講演8(14:30 – 14:50)
    少数のレゾルベントの線形結合の多項式をフィルタとする対称定値一般固有値問題の解法
    ○村上 弘(首都大学東京)

    概要:実対称定値一般固有値問題に対して,必要な固有値の範囲を指定して,求めたい固有ベクトルは良く通過させるがそれ以外を強く阻止する特性を持つ線形作用素をうまく構成する.それをフィルタに用いることで必要な範囲の固有値に対応する不変部分空間の近似空間の基底が構成できる.調整された「少数のレゾルベントの線形結合」の多項式をフィルタとして用いるが,簡易さから多項式にはチェビシェフ多項式を用いている.必要なレゾルベントの数は,複素共役対称性を用いると半減できて,2~3個あるいは4個になる.

セッション3 3月16日 (金) 15:00 – 16:20

  • 講演9(15:00 – 15:20)
    Oakforest-PACSにおける一般化固有値計算の性能解析と性能予測
    ○星 健夫(鳥取大), 福本 智哉(鳥取大), 深谷 猛(北大), 山本 有作(電通大)

    概要:超並列一般化固有値問題ミニアプリEigenKernel(星ら)に対して,Oakforest-PACSでの性能(消費時間)解析を行なった.さらに,性能モデリングとベイズ推定を組み合わせた性能予測を試行した.上記は,大規模量子物質計算(電子状態計算)の基盤として行なっている.特にノード数を増やしていく方向への外挿に大きなニーズがあり,最終的にはドライラン機能(実計算の前に消費時間を予測する機能)として,アプリに実装したい.
  • 講演10(15:20 – 15:40)
    特徴量スケーリングを用いたスペクトラルクラス分類
    ○松田 萌望(筑波大学)、保國 惠一(筑波大学)、櫻井 鉄也(筑波大学、JST/CREST)

    概要:スペクトラルクラスタリングは複雑なデータ分類において有効であるが、必ずしも所望の分類を与えるとは限らない。そこでデータの一部のラベル情報を用いたスペクトラルクラス分類手法を提案する。ラベル情報に基づいたFiedlerベクトルを用いて特徴量のスケールを調整するための因子を固有ベクトルとして持つ固有値問題を定式化する。これを解いて得られる因子をデータ全体に施すことで分類精度を向上させる。従来の教師付き分類手法と数値実験で比較して提案法の性能を評価する。
  • 講演11(15:40 – 16:00)
    多項式固有値問題のすべての固有値に対する数値的検証法
    ○相馬 彩乃(岩手大学),宮島 信也(岩手大学)

    概要:多項式固有値問題のすべての固有値に対する数値的検証法を提案する.このような方法は2010年にMiyajimaにより提案されている.この方法はすべての固有値に対して1つの誤差限界を与える.これに対して,本講演で提案する方法は各固有値に対してそれぞれ一般に異なる誤差限界を与える.さらに,提案する方法により得られた(複数の)誤差限界がMiyajimaの誤差限界に比べて同等以下であることを示す.提案する方法の計算コストはMiyajimaの方法の計算コストとほぼ同等である.
  • 講演12(16:00 – 16:20)
    Verified numerical computation for the matrix principal logarithm
    ○Shinya Miyajima(Iwate University)

    概要:Two iterative algorithms are proposed for numerically computing an interval matrix containing the matrix principal logarithm. The first algorithm is based on a numerical spectral decomposition and requires only cubic complexity per iteration. The second algorithm is based on a numerical Jordan decomposition and applicable even for defective matrices.

セッション4 3月16日 (金) 16:30 – 17:30

  • 講演13(16:30 – 16:50)
    3次元高次テンソルくりこみ群におけるテンソルのリオーダリング手順の最適化
    ○山田 悠加(筑波大学),今倉 暁(筑波大学),今村 俊幸(理研AICS),櫻井 鉄也(筑波大学, JST/CREST)

    概要:近年,素粒子物理学において系の分配関数を求める手法として,テンソルネットワークを用いた高次テンソルくりこみ群(HOTRG)が注目されている.HOTRGの計算コストの主要部は複数テンソルの縮約であり,一般に行列積に基づき実装される.この時テンソル要素の入れ替えであるリオーダリングが頻繁に起こるという問題がある.本発表では,分散並列実装を前提とし,リオーダリング時間の削減を目的としたリオーダリング手順の最適化手法を提案する.
  • 講演14(16:50 – 17:10)
    SOR法の緩和パラメータの幾何学的解釈
    ○宮武 勇登(名古屋大学),曽我部 知広(名古屋大学),張 紹良(名古屋大学)

    概要:SOR(逐次過緩和)法は線形方程式に対する代表的な定常反復法である.本講演では,勾配系と呼ばれる常微分方程式系に対するある数値解法とSOR法の算法としての同値性を示すことで,SOR法の緩和パラメータに対して,ある変数変換のもとでステップサイズとしての意味付けを与える.さらに,その議論に基づき,緩和パラメータの適応的な設定方法などについて考察する.
  • 講演15(17:10 – 17:30)
    3次曲線の新たな行列式表示と2つの代数曲線の交点計算への応用
    ○菊地 充彦(埼玉大学),重原 孝臣(埼玉大学)

    概要:m次、n次の2つの平面代数曲線の交点を求める問題P(m,n)の数値解法として、問題を連立一般固有値問題に帰着する方法が知られている。この際、曲線を行列式表現する必要があり、Plestenjakの方法に従えばn次曲線はn(n+1)/2次の行列式で表現できるが、この方法では交点自体が求まらない場合や求まっても精度が著しく低下する場合が多い。本発表では、n=2,3の場合に対してn次曲線をn次の行列式で表現する方法を示し、これを用いるとP(m,n) (m,n=2,3)の数値解の精度が大幅に向上することを報告する。